裏になるもの

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「辻堂さんの純愛ロード」 2 概要・導入部

メインブログに書くレビューの下書き。

1 概要

そんなわけで。みなとカーニバルの不良娘といちゃくつADV「辻堂さんの純愛ロード」をプレイした。恋の甘みも痛みもくるんだ潮風が香り立つ良作だった。プレイ時間は約45時間、撮影したスクリーンショットは約2300枚。
タカヒロ企画恒例のヒロイン全員共通属性、今回は不良娘・ヤンキーである。作品概要は公式サイトを参照。

企画タカヒロが送る「つよきす」「真剣で私に恋しなさい!」に続く
学園コメディの第3弾は、シナリオ・さかき傘 原画・みこしまつり の
タッグでお送りするヒロイン全員不良娘の「辻堂さんの純愛ロード」
選択肢で分岐していくオーソドックスなADVです。目的は青春の堪能!
強気な彼女達と織りなす、明るいドタバタ学園生活、そして彼女達が
交流を深めると見せ始める、女の子らしさをお楽しみ下さい。

辻堂さんの純愛ロード 作品概要

企画に加えてキャラクター設定もタカヒロがやっているから、本作をタカヒロ作品と呼ぶことも可能ではあるけど、さかき傘の色も濃いので判断が難しい。例えば、キャラクターたちが決定的に何かを与えられていたり失っている、というところはタカヒロらしいが、彼らがそれをどう受け止めどのように己の生を全うしていくか、というところは既存のタカヒロ作品とやや異なる。
ゲームの目的について、青春という言葉が持つ射程の広さを活かし、女の子との恋愛を主眼にしつつもそれだけにとどまらない楽しみを提示する。これは本家みなとそふとの「まじこい」「まじこいS」と同じ手法だ。辻堂愛と長谷冴子以外のヒロインは主人公・長谷大と通う学校が違うから、学園生活というよりは学生生活の方が近いかもしれない。
ちなみに、画面エフェクトとして頻繁に出てくる「!?」からもわかるとおり、本作は往年の不良漫画をルーツに持つ(タカヒロが漫画読みであることは言うまでもない)。
みこしまつりは特に好きな原画家ではなかったけれど、作風にはよく合っていたと思う。
BGM担当の琉姫アルナは初めて聴くコンポーザーだった。「Shonanグラフィティ」「自分が自分であるために」「Follow you」「やさしくありたい」などが好み。
橋本みゆきの主題歌「純愛ロード☆スクールデーズ」はすっきり爽やか、舞崎ナミのED曲「My Love, Honey.」は潤い豊かでよし。
メインスタッフについては以上。
みなとの自社ゲームエンジンも機能が充実してきて、現代のADV系エロゲで必要とされる機能はひと通り用意してあるし、立ち絵や演出も軽快に動くのでいい感じ。バックログからの復帰後もオート継続してほしいけど、これは好みの問題かな?
イベントモードで作中1日単位のシーンを見返すことができる。特定フラグで何らかのイベントが起こるシーンを見ようとすると「***フラグあり」「***フラグなし」を問われるから、選択肢の存在によって特定フラグがあることを知ることができ、これが自力攻略する際に役に立つ。上級者向けチュートリアル(20回チュートリアルを見ると行ける)の情報も含めれば、これでCG・回想は100%埋まる。ただ、ネタ系のエンドは気付かないこともあるため、完全にコンプしたいなら「BugBug」2012年11月号の攻略記事等を参考にするとよい。
「辻堂さんの純愛ロード」は導入部→選択部→各ルートという構成になっているから、ここでもその道筋にそって感想を書いていくことにする。

2 導入部

導入部(OPムービーが流れるまで)の選択肢は、選択部以降のフラグに影響しない。好きに選んだ。導入部の時点では導入部で語られることに何の意味もない。その意味は各ルートに入ってから遡及的に決定される。
長谷大と辻堂愛の馴れ初め、あるいは一夏限りの思い出。愛はケンカ以外の他の何か(目的)を探していたし、大は愛に他の何か(手段)を提案した。
大の特性は「意志の尊重」であり*1、その派生として「オルタナティブ(代案)の提示」がある。愛に何かをしたい(したくない)という意志があり、しかし彼女固有の事情によりそれができない(するしかない)とされる時、彼女の意志を汲み取って別の方法を模索してあげるということ。コンフリクトからの解放だ。

【大】「辻堂さんは『準備会』でなく、『俺』を手伝う。ってのはどう?」
[…]
【愛】『アタシ……ほら、普段あんなだから、色々できないこととか多くて』
【愛】『でもその生き方を選んだのはアタシで、だから出来ないことがあっても、仕方ないって思ってて。でも』
【愛】『……』
【愛】『ホント……感謝してる』
(導入部、6月8日)

見方を変えれば尊重するのは愛の意志だけであり、だからケンカという手段を認められないノーマルな大は彼女にケンカ以外のやり方を示し続ける。

【愛】「敵前逃亡なんて人生初だぜ」
[…]
【愛】「はー……、逃げるってイイな。今度からちょくちょくやってみよーかな」
(導入部、6月9日)

【愛】「逃げるってやっぱイイな。楽だし、すげーしてやったりって感じ」
【大】「逃げるが勝ちっていうもんね。理不尽にからまれた状況ならなおさら」
【愛】「知らなかった」
【愛】「最近ケンカがつまんなかったけど……そっか、こんなやり方もあるんだな」
(導入部、6月10日)

三大天。三角関係より多角な関係(四角関係、五角関係……)はおしなべて陳腐である。*2だから、きっと大が覚悟を決めてそこに身を投じた時から彼女たちの時代は終わり始めていた。張り詰めた三角形が保たれたのは総災天落しがあった6月5日から3会事件が起きた6月13日までであり、あとは全て三大天崩壊の歴史と言えなくもない。
積み上げが丁寧で、導入部まででメインヒロイン3人の魅力は十分に伝わってきた。
ここまでの中では、大がヤンキーの良さと悪さについて悩み揺れ動くテキストが印象的だ。「彼女にはいいとこあるし……でもヤンキーだし……でもかわいいし……でもよくないことしてるし……」みたいなウジウジ感がよい。

選択部

辻堂愛

片瀬恋奈

腰越マキ

*1:公式サイトのキャラクター紹介を参照。

*2:出典忘れた。